Kさんは就職以来勤めてきたA社が「特殊な会社」だと信じてきた。二十八歳のKさんが就職活動をしたのは、ベンチャーブームといわれる時期だった。「古い体質の会社では生き残れない」というベンチャーの考えに共感したKさんは、できるだけユニークな会社に就職したいと願うようになり、流通サービス関係のベンチャー企業A社に身を投じ、営業の仕事を行ってきた。A社の社員は、事あるごとに自分たちを「特殊な会社だ」と言った。
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実際、A社はニッチな分野で大きなシェアを得ているオンリーワン企業であり、また昇進を自己申告で行う人事制度は内外から注目を集め、いくつものメディアがA社を取材に訪れていた。Kさんも大学の後輩達に「A社は既成の考え方にはとらわれない、特殊な会社だ」と言っていたが、もちろんKさんが勤めたことのある会社はA社だけなのだから、他社と比較してそう言っているのではない。ただ、周りの雰囲気から、そう感じていたのであった。